ちびっ子体力測定Physical fitness test

ちびっ子体力測定

「ちびっ子体力測定」とは?

幼児期運動指針や小学校学習指導要領には、幼少期に「多様な動き」を「楽しく」経験することが必要とされています。多様な動きとは、具体的に「体を移動する運動」、「体のバランスをとる運動」、「用具を操作する運動」、「力試しの運動」の4つに分類されています。

  • 移動する
  • バランスをとる
  • 操作する
  • 力試し

それぞれの運動を代表する力をみる測定として、「ちびっ子体力測定」では4つの全国規模の評価基準値をもつ測定が用意されています。
立ち幅跳び(移動)」、「片足立ち(バランス)」、「ボールキャッチ(操作)」、「 たいぞくかん (力)」の4つです。どれも、家の中でもできる測定です。

これまでに多くの方の努力によってつくられた基準値のおかげで、私たちは、わが子と他の子が運動している姿を直接比較することなく、わが子の運動発達の状態を知ることができます。例えば、「その場で前方にジャンプした距離を測る」だけで、全国の同年代の子どもたちと比べた発達の状態が分かるなんて、すごいことだと思いませんか!?

全国規模の基準値に基づいた「家でもできるちびっ子体力測定」を活用して、
ご家庭でお子様の体力バランスを確認してみましょう!

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監修者のご紹介

ちびっ子体力測定3つのポイント

  • POINT1

    全力を出せる環境

    大人は、子どもが「すごい!やってみたい!」、「あんなふうにやればいいんだ」と感じられるような全力の見本を見せましょう。また、励ます声かけや認める声かけを積極的に行って、子どもの最大努力を引き出せるようにしましょう。

  • POINT2

    正確な測定

    各測定で、基本的な測定回数は決められていますが、子どもの全力が出ていないと感じた時は再度測定しましょう。測る人によって、測り方にバラツキが出ないように、事前に測定方法をよく理解した上で正確に測定するよう心がけましょう。

  • POINT3

    一喜一憂しない

    運動発達が同年齢の子どもよりも「はやく」ても「ゆっくり」でも、一喜一憂せずに、子どもの運動発達が促進される(疎外されない)環境を継続してつくっていくことが重要です。環境次第で、子どもの運動発達は大きく影響され変化していきます。

  • ・身体を大きく使う動作があるので、ご家庭にある周りのものや人にぶつかりけがする事がないように十分注意して楽しく行いましょう。
  • ・本サイト内に掲載されているイラスト、文章、写真について許可なく複製、転用することを固く禁じます。

お家でできる体力測定内容

※全ての実施者は親子です。

はば
(体を移動する運動)

準備するもの
  • ・メジャー
  • ・はだしになる
  • ・スタートラインとして30 cmほどの線を引いておく
方法
  • ①スタートラインから両足でできるだけ遠くへ跳ぶ。
  • ②着地した足のかかと(スタートラインに近い方)までの距離を測る。
  • ③2回のうち良い方の記録をとる(cm単位で)。
動画で見る

二重踏み切り(ジャンプ直前に少し前に出てから跳ぶ動作)になっている場合は、実際の能力よりも遠くへ跳んだことになってしまいます。この場合は、少し前に出てしまったところから着地までの距離を測りましょう。

かたあし
(体のバランスをとる運動)

準備するもの
  • ・ストップウォッチ(時間を計れるもの)
方法
  • ①目はあけたまま、片足を膝が約90度曲がるくらいまで上げて静止する。手の動きに制限なし。
  • ②地面から足が離れた時点から計測開始。支持足が動いたり、両足が地面についたり、上げている足が支持脚についたりしたら終了。
  • ③左右1回ずつ行い、その平均を記録とする。
動画で見る

子どもが集中できる環境で行うことが重要です(テレビを切る、など)・特に「ヨーイ、スタート」などという必要はありません。
大人が見本を見せながら子どもが足を上げた瞬間から計り始めてあげましょう。

ボールキャッチ
(用具を操作する運動)

準備するもの
  • ・ゴムボール(直径12-15cmくらい)
  • ・3m離して2本の線を引いておく
方法
  • ①ラインの一方に計測者、3m離れたもう一方に子どもが向かい合って立つ。
  • ②測定者は下手投げで子どもの胸の所に山なりのボールを投げる(山の頂点が170cmほどの高さになるように)
  • ③子どもはボールの落下点に合わせ線の前に出て捕球したり、横に動いて捕球しても良い。
  • ④10回中何回キャッチできたかをカウントする。
動画で見る

ボールの頂点が170 cmというと、だいたい平均的な日本人男性の身長くらいです。その頭の上をボールが通るようなイメージでボールを投げてあげると良いでしょう。
計測者の投げたボールが、子どもから大きくそれてしまった場合はカウントせずに、やり直しをしましょう。

たいぞくかん
(力試しの運動)

準備するもの
  • ・ストップウォッチ(時間を計れるもの)
  • ・踏み台になるもの
  • ・計測中に子どもの足が地面につかないような机(できれば同じ高さの机を2台、なければ1台と大人の肩)
  • ・机と机(または机と人の肩)の間隔は約30-35cm
方法 【同じ高さの机が2台ある場合】
  • ①机と机の間に踏み台を置き、その上に子どもを立たせる。
  • ②机と机に手を置き両腕で体重を支える姿勢にさせる。肘が曲がったり、体や足が机や床に触れないようにする。
  • ③姿勢が整ったら、ゆっくりと踏み台を抜き、計測を開始する。
  • ④体や足が机に触れて離せない状態になった時、または床に降りた時に測定は終了する。
  • ⑤基本的には1回測定する(何秒、腕で体を支えることができたか)。
方法 【机が1台しかない場合】
  • ①机と大人の間に踏み台を置き、その上に子どもを立たせる。
  • ②机と大人の肩に手を置き両腕で体重を支える姿勢にさせる。肘が曲がったり、体や足が机や人に触れないようにする。
  • ③姿勢が整ったら、ゆっくりと踏み台を抜き、計測を開始する。
  • ④体や足が人に触れて離せない状態になった時、または床に降りた時に測定は終了する。
  • ⑤基本的には1回測定する(何秒、腕で体を支えることができたか)。
動画で見る

限界が近づくと、前後に大きく揺れる子もいます。後ろに転倒しないように補助できる体勢をつくっておきましょう。
周囲の応援によっても結果は大きく変わってきます。子どもが頑張れる声かけをしてあげましょう。
人の肩を使って行う場合は、真横から見て机と同じ高さに肩の高さがくるようにしてください。
子どもの手の幅が広いと上手く力を出せません。子どもの体に机(または人)がつかない程度に近づいて、間隔を調整してあげてください。

結果を確認

ちびっ子体力測定 結果のみかた

はじめに

数値として結果が出ると、低くて不安になったり、高くて安心したりされるかもしれません。中には、「幼児期に評価なんて必要ない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。たしかに、体力測定と言ってもその子の運動発達のすべてをみることができるものではありませんし、幼児特有の誤差も入りますので、結果のみかたには気をつける必要があります。しかしながら、幼児期の体力の客観的な評価が不要で全くあてにならないものともいえません。例えば、幼児期の子どもは、運動をしていなくても発育による体格や体力の自然な増加があるため、大人は子どもの体力が順調に伸びてきていると勘違いしやすいという研究報告があります(福冨ほか、2012、発育発達研究)。また、子どもがよく動いているように見えても、実は、経験している動きは限定的で、一部の体力しか発達していないこともあります。子どもの様子を見ているたけでは、その子の運動発達の現状を正しく捉えることは、なかなか難しいのかもしれません。客観的な指標をもとに比較することで、初めて色々と気づくこともあります。
以下に、幼児の体力測定の結果のみかた・解釈の仕方について説明させていただきますので、ご家庭での子どもの運動環境づくりにご活用いただけますと幸いです。

測定項目について

「家でもできるちびっ子体力測定」では、日本の全国規模の基準値をもつ「幼児の運動能力調査注1)」で使用されている「立ち幅跳び、ボールキャッチ(捕球)、体支持(たいしじ)持続時間」の3項目、そして、近年、スペインで開発された全国規模の基準値をもつ「PREFIT(プレフィット)注2)」で使用されている「片足立ち」の1項目を採用しています。いずれの測定も、家の中でも簡単に実施でき、幼児の全国規模の信頼できる基準値をもち、幼児期に経験して欲しい「体を移動する運動」、「体のバランスをとる運動」、「用具を操作する運動」、「力試しの運動」を代表するような項目となっています。


注1)文部科学省(2011年)体力向上の基礎を培うための幼児期における実践活動の在り方に関する調査研究報告書.
注2)Cadenas-Sanchez et al. ( 2019年) Physical fitness reference standards for preschool children: The PREFIT project. J Sci Med Sport.

結果票の「発達の目安」は、「(運動発達が)はやい、ややはやい、標準、ややゆっくり、ゆっくり」の5つに分けられています。同じ月齢の子どもでも発達には個人差があるので、体力が「優れている、または劣っている」といったような表現よりも、「(運動発達が)はやい、ゆっくり」のような表現としています。実際、「ゆっくり」に該当する子どもでも、その後の環境次第で「標準」やそれ以上の運動発達状態になることもありますし、その逆(はやい→ゆっくり)になる子どももいます。

図1に示したように、特に幼児は家庭環境によって運動発達は大きく影響を受けます。運動発達が同年齢の子どもより「はやく」ても「ゆっくり」でも、一喜一憂せずに、子どもの運動発達が促進される(疎外されない)環境を継続してつくっていくことが重要です。

5段階評価は、図2のようなデータ分布に基づいています。例えば、日本中の子どもが「立ち幅跳び」をすると、図2のように平均値付近に最も多くの子どもが集まり、その値より高い子どもや低い子どもは段々と少なくなるような「山」型の分布となります。この集団の割合に応じて、値の高い方から順に、7%の集団を「5:(今回の結果票では)はやい」、24%の集団を「4:ややはやい」、38%の集団を「3:標準」、24%の集団を「2:ややゆっくり」、7%の集団を「1:ゆっくり」としています。そのため、「1(ゆっくり)」または「2(ややゆっくり)」と評価される子どもは、理論的には必ず31%いますので、ただちにその状態が「悪い」わけではなく、過度に心配する必要はありません。実際、母子手帳などで使用されている身長を記入する成長曲線では、図2でいう「10段階評価の1」の状態(同年齢の集団の3%)が「続く」場合に、はじめて何か問題があるかもしれないということで医療機関の受診が勧められます。つまり、体力も継続的に見ていくことが必要です。特に幼児はその日の体調や気分が測定値に大きく影響します。今回の測定の時に、(たまたま)全力が出せなかった可能性は否定できません。今回行った測定は、ご家庭でも実施できるものばかりですので、2,3カ月に1回くらい実施して、今回の結果票に継続して記録をつけてみてはいかがでしょうか?身長・体重を定期的に測って体の発育を確認しているように、体力も定期的に測って運動発達の状態を可視化してみると良いのではと思います。

幼少期にどんな運動をするといいの?

「測定結果のみかたや、継続して運動発達の状態をみていく必要性は分かった」、「じゃあ何をすればいいの?どんな運動環境があればいいの?」と思われる方が多いのではないでしょうか。
まず、測定値をあげるための練習をして測定値を上げてもあまり意味はありません。これは測定をするとよく起こりがちなことです。例えば、立ち幅跳びが低かったから立ち幅跳びをさせよう。とか、片足立ちが少ししかできなかったから片足立ちさせようといったことです。その測定の運動だけができるようになることに、あまり価値はありません。
幼児期運動指針や小学校学習指導要領には、幼少期に「多様な動き」を「楽しく」経験することが必要とされています。多様な動きとは、具体的に以下の4つ「体を移動する運動」、「体のバランスをとる運動」、「用具を操作する運動」、「力試しの運動」に分類されています。それぞれの運動として、代表的な動きをいくつか以下に挙げます注3)。

注3)香村恵介ほか(2018年)子どもの運動遊びバイブル.株式会社みらい.

移動する運動

  • 走る
  • 跳ぶ
  • くぐる
  • 這う
  • 登る
  • かわす

体のバランスをとる運動

  • 立つ
  • 乗る
  • 渡る
  • 逆さになる
  • 回る

用具を操作する運動

  • 転がす
  • 投げる
  • 捕る
  • 蹴る
  • 回す
  • 運ぶ
  • 振る
  • つく
  • 打つ

力試しの運動

  • 押す
  • 引く
  • 体を支える
  • 持ち上げる

これら「幼少期に必要な運動(動きの経験)」と今回の体力測定を関連させて考えると、「体を移動する運動」として「立ち幅跳び」、「体のバランスをとる運動」として「片足立ち」、「用具を操作する運動」として「ボールキャッチ」、「力試しの運動」として「体支持持続時間」が当てはまります。しかし、上のイラストから、経験して欲しい動きは他にもたくさんあることが分かると思います。
このような考え方から、もし「立ち幅跳び」の評価が「ゆっくり」だった場合、跳ぶ運動だけ意識して行うのではなく、「体を移動する運動」に含まれるような様々な動きを含んだ運動遊びを行うとよいでしょう。特に「用具を操作する運動」や「力試しの運動」は、大人が意識的に環境をつくらないと子どもはなかなか、経験する機会がありません。

図3に示した調査結果のように、まずは外遊びの時間をなるべく多くとることが最も重要です。公園に出かけたり、外に散歩にでかけたり、なるべく屋外に出る時間を確保してみましょう。とはいっても、幼児くらいの子をもつ親の年代は、仕事で期待されることが増え、なかなか時間に余裕がない年代かもしれません。また、家事にも時間がとられて常に忙しくバタバタしていて、もし、少し時間ができたとしても、「少しでも体を休めたい…」と思いがちかと思います。しかし、子どもが親と遊んでくれる時期はわずか数年のことでしょう。すぐに過ぎ去ってしまいます。この時期の運動環境(運動経験)は子どもの生涯にわたる運動との関わり方に大きな影響を及ぼすと考えると、気付いた時に10分でもいいので、「外で遊ぼ!」と子どもに声をかけてみてください。また、休日などを利用して、まとまった時間、子どもとじっくり体を動かして遊ぶこともいいかもしれません。最近、公園を見ていると、「子どもとは一緒にいるけれど、親はスマホの画面を見ている」といった光景をよく目にします。人の一生の中でも限られた幼児期にこそ、子どもに向き合っていくことが大切なのではないでしょうか。

また、図4のように、一緒に遊ぶ友達が多い子ほど運動発達が促進されているという報告もあります。ひと昔前は、子どもの数も多く、楽しいゲームやDVD、映像コンテンツなどがなかったこともあり、大人が特に気にしなくても、子どもは大人数で外遊びをする機会が多かったのだろうと思います。しかし、現在は子どもを取り巻く環境が変わり、それに追い打ちをかけるように新型コロナウイルスの影響で「ソーシャルディスタンス」という言葉が定着し、大人数で群れて遊ぶ機会もめっきり減ってきたのではないでしょうか。こんな時代だからこそ、意識的に親同士がコミュニケーションをとって、子どもが群れて活発に遊ぶことのできる環境をつくっていく必要があると思います。子どもたちは、遊び道具が何もなくても、仲間がいると創造的な遊びを考えて遊ぶことができます。また、少し年上の活発なお兄さんお姉さんと一緒に外遊びをすることは、子どもの運動発達にとても重要なのではないかと考えています。

新型コロナウイルスの影響で失ったものが多かった反面、得たものもあると考えます。例えば、子どもの運動に関する社会的な意識が高まり、子どもの運動に関わる動画はこの半年余りで急激に増えました。このような情報を活用しながら、子どもと遊んでいくことも効果的かもしれません。

【家でもできるちびっ子体力測定 監修者】

  • 香村 恵介 氏
    名城大学農学部体育科学研究室
    准教授 博士(スポーツ健康科学)
    幼少期の子どもたちが心身共に健康で運動好きになることを目指して、子どもの体力・運動能力や身体活動に関連した研究に取り組む。

是非、この機会にご家庭で子どもの運動環境について振り返って頂けると嬉しいです。幼児期に適切な環境と支援があれば、すべての子どもが「運動が得意、好き」になることができるはずです。


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